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北海道を振り返って【ル・ミュゼ編】

北海道を振り返って【ル・ミュゼ編】

今回のフェアをやろうと言ったのが、たしか函館学会のときで4月。
メニューは7月にメキシコに行った時に、
一緒に過ごす滞在期間=1週間もあれば決まるかと言っていて、何も話さず。
10月に入り、結局フェア直前、
フランス帰りの余裕の石井シェフと電話で打ち合わせ。

二人の会話は、
『どうしようか…』
『なんかいいのないかね?』
『寿司どこ行く?』
これの繰り返しで、あっという間に本番当日。
まあ、それは大げさにせよ、今回はこちらが行くという事もあり、
石井シェフには、かなりおんぶにだっこお世話して頂きました。

今回の料理テーマは「自分から見た北海道」で、
思い浮かぶ北海道の料理や素材をタカザワのフィルターでどう表現するか。
あと、石井シェフとの共通点や思い出をお皿に添えました。
思い浮かんだのは、
スープカレー、味噌ラーメン、白い恋人、ジャガバター、
ジンギスカン、海鮮丼、食べられる土、メキシコ…などです。

じゃあ、それをどうレストランで再構築するかを考え、
石井シェフに原案を投げました。それから数日。「出来そうだからオーケー。」
後は、「なんとかなるっしょ!」で、二人の電話は終わりました。
それが出来るのは、おそらく僕たち二人だからこそ出来た事だと感じています。

結果は、お客様から喜びと満足の声を、とても良い反応を、頂きました!
やればまだまだ出来る伸び代も見え、
違和感無く自分たちスタッフすらも楽しめたので、何よりも後味がよかったです。
海外でフェアを以前やらせてもらった時は、
達成感と同じくらいアウェーでの苦労と疲労感が大きかったのが事実。
そのため、それ以降アウェーで料理する事には躊躇を持ち続けています(苦笑)。
恐らく石井シェフはミュゼで他のシェフたちとのコラボも多く経験しているので、
それも理解して、負担を少なく、
接待は手厚く(笑)を実践してくれたのだと思います。感謝、感謝。

北海道を振り返って【ル・ミュゼ編】

そんな石井シェフに、
ミュゼのスタッフ皆にこのフェアの記念に
コラボTシャツを作ってプレゼントしたいと思い、
『なんか文字を入れたいから適当に短くてもかまわないから急ぎで、
今回の思い入れをメールで頂戴!』とお願いしたところ、
ものの1時間でこんなメッセージを書いてくれました。
料理以外にも、こんなに文才のある料理人が他にはいないと感動しました。
ノンカットでそれを載せさせて頂きます。

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料理人には、大きく分けて2種類のタイプが存在する。

アーティストと職人

例えば、【職人】であれば、江戸前の鮨職人のように、

伝統の中で磨かれた卓越した技術を駆使して、

明確なゴールを目指し、ひとつの作品を作り上げるのが、それに当たると思う。

それは、様々な料理のジャンルで同じことが言える。

伝統的な方法論に裏付けられた【確かな技術】を継承していくのが文化であり、

そして、それによって導かれる【確かな味】を守り抜くのが職人の使命でもある。

それは、師から弟子へ愛情と厳しさを持って受け継がれるもの・・・

・・・

おそらく、我々フタリの存在価値は、そこにはない。

フタリは、同じくして師を持たない・・・

フタリは、同じくして伝統に背を向け、破壊する・・・

そして、内なる光に目を向けて、新しい扉を開きたいと渇望し、

たとえ失敗がそこにあっても、人と同じ道を拒絶し、

人と違う価値を創造しようと挑む。

我々がもっとも愛すべき言葉は【独自性】

そして・・・【創造性】

オリジナリティーにこそ、我々の存在意義がある。

・・・

料理とは、アートではなく【食事】という、ありふれた日常の一部である。

その日常に、我々は挑戦し、【非日常】を描きたいと強く願う・・・

インスピレーションや奇抜なアイデアのみで、

人が食べて【美味しいもの】など作ることはできない。

そこには・・・卓越した技術と知識が必要とされる。

食材への探求心と愛情も不可欠であり、

また、食べ手への優しさなくして、本当に美味しいものなど作ることができない。

【アート】のように映る・・料理を作るには、

そうした背景も同時に求められるものだ。

それは、実は【職人的】な要素であったりもする。

・・・

長い前置きは、ここに繋がる・・・

我々フタリの出会いは、そうした【価値観】の中で、

【言葉】を超えて、何の説明もなく、

突然始まった・・・

それは、電波のようなものである。

ごく稀な周波数の弱い電波であって、

普段は、何処の誰とも【繋がる】ことがないのだが、

お互いが、同じタイミングで受信することが出来た・・・

我々が信じる【感性】というのは、

すべて、そういうことである。

【感性】に説明は、不要である。

今回のコラボレーションも同様に、

説明を超えて、いろいろなカタチのない【何か】を

感じて頂けたなら、

フタリにとって成功と言えるのかもしれない・・・

BY Makoto Ishii

北海道を振り返って【ル・ミュゼ編】