第三回函館世界料理学会
今回は例年より会場を拡張して、800人も入る芸術ホールを使っての大きなイベントになりました。
深谷シェフを中心とした料理人の小さな呼びかけが、第三回をもって、
【世界料理学会】の名にふさわしいものに昇華しています。
この料理人たちの豪華な顔ぶれに、いち料理人として交われる事は、この上ない幸せな時間です。
生意気な僕も、日本の先輩方に、横並びでかわいがってもらえる事が、この料理学会の最大の‘得’かもしれません(笑)。
さて。‘海藻’をテーマにした今回の学会発表にも少し触れておきたいと思います。
海外シェフたちにとって、海藻そのものを使う機会は多くないらしく、
今回のこの学会が勉強するきっかけになったというシェフもいました。
寒天などの凝固剤が、海藻から出来ていることは知っていても、若布や昆布をそのまま使う事は稀だそうで、
食す側がなかなか慣れていないというのが現状のようです。
確かに、当店でも、海外のお客様に海藻類をお出しすると、残されることがよくあります。
そんな中。今回僕が推薦させていただいた日本人パティシエ、パティセリーSTOVEの斉藤シェフは
秋田で、世界レベルの非常に高いクオリティーのお菓子を開発、発信し続けています。
そんな彼の海藻デザートは、昆布出汁をベースに、抹茶などで色をつけ、薄くシート状に延ばしてから乾燥。
それをリボン状にカットし、まるで若布のような見た目を楽しむ一品でした。
今回が初めての学会参加だったにも関わらず、素晴らしく作りこんだ映像とプレゼンテーションで
彼のプロ意識の強さが感じることができました。
斉藤シェフの斬新な発想と作品の美しさに驚きましたし、本当にとてもすばらしい発表でした。
スターシェフのALINEA・グランはというと。
サイフォンを使って、お客様の目の前で出汁をとってサービスをするというプレゼン。流石、な域でした。
スペイン・イニャキは、スペイン人らしく海藻にはふれず(笑)、自分の得意とするユーモア溢れるピンチョスの数々を発表。
メキシコ・エドガーは、海藻の出汁をスイカに染み込ませたり、雲丹と若布でラビオリにしたりと、非常に盛り上がった発表でした。
そんな会場では、質問が飛び交いました。
観客の一人が、外国人シェフにこんな質問をしました。
『それは、一体、何料理なのですか?』と。
外国人シェフは答えました。
『その土地の素材を使って、その土地の人間が料理をすれば、その国の料理って表現していいんじゃないか』と。
この類の質問と答えはしばしば繰り返されました。
そして、僕にとってはこの質問はうちのお店でもよくゲストから投げかけられるものと同じでした。
僕は、何料理、というカテゴリーわけの時代はもう終わっているのではないかと思っています。
世界中の料理人が、世界中を旅して、経験して、そこで得たものを、お皿の上で表現していくのが、まずひとつ。
その逆も然り、その土地のものを、その土地の方法で表現するのが、もうひとつ。
後者は分かりやすく、その土地の料理(例えば、日本料理・メキシコ料理・スペイン料理、などなど)として存在しますが
ここでのポイントは
自分=個性
です。自分というフィルターを通して、自分の作品として表現された一品、それが料理だと僕は思っています。
つまり、僕で言うなら日本の料理を作っているけれど、TAKAZAWA流に仕立てて、
そこには僕が、【TAKAZAWA】が、いる、と感じてもらえるということです。
そんな大切な答えとプライドをもって、世界の舞台に立ち続けるシェフたちに、心から拍手、
でした。