スペイン報告③
スペイン報告③番外編~磁石~
【LMG】このような学会に集まる多くの方々の第一の目的は
技術をはじめ、考え方や、それぞれのシェフたちの哲学を
探る、学ぶ、吸収する、事だと思います。
もちろん僕も同じですが、それ以上の楽しみが、最近の僕にはできるようになりました。
何度もスペインを訪れるようになり、また、学会の‘発表者’になり
目に映ってくるものが、変わってきたのかもしれません。
例えば、マルティン・ベラサテギシェフの姿。
もちろん世界的に有名なシェフですから、一日何十人?何百人?という
新しい人たちとのコミュニケーションがあることと思います。
そんな彼の周りにはいつも人だかりができて、写真を撮ったり話をしたり。
そんな多忙を極めている中でも、僕を会場内でみつけると、『YOSHI!』と
呼んでくれ、みんなに『僕の友達のYOSHI』と紹介してくれます。
どちらが上でも下でもなく、有名でも無名でもなく、料理を通して知り合った僕を
「友達」と呼んでくれる。そんなマルティンに感動をおぼえたり。
変圧器事件を助けてくれた、おじさん。
初対面の僕の問題を、誰より親身に、誰より一生懸命なんとかしようと
試みてがんばってく、さらには不可能を可能にしてくれた彼の親切さとあたたかさ。
スペイン1番の親友、イニャーキ。
イニャーキがその昔紹介してくれてからの友人、フエゴネグロの3人。
イニャーキが今回新しく紹介してくれた、友達。
そんなみんなから僕は、計り知れないほどの歓迎と手助けと、
素晴らしく楽しい時間をもらっています!
そして、今回の【LMG】での新しい出会いは、キケ・ダコスタシェフです。
今回、僕のワークショップで使用する食材を全て集めてくれたので
El Poblet のシェフ、キケ・ダコスタシェフです。
学会の地‘アリカンテ’から、1時間半ほど行ったところに彼のレストランがあるので
「何か困った事や、必要な食材があるなら、何でも言ってくれ!」
と声をかけてきてくれました!
学会側の手配がかなり混乱していた今回は、自分たちでやる部分が多く、
とても大変だったので、彼の優しさには本当に感謝しています。
さらに、彼はこの学会に参加しながらレストラン営業もこなしていました。
僕も学会最終日に、シカゴ・アリネアのシェフGrant と一緒に招待を受け
キケの料理を堪能させてもらいました。
とはいうものの、キケにとってはかなりハードな学会だったことでしょう。
僕らのディナーも例外ではないと思いますが
学会終了してからのディナーなので、23時スタート(!)。
全員の食事が終わったのは、夜中の3時でした・・・
本当に身を削っての、キケのおもてなしに僕は心が打たれました。
学会に参加する=お店を閉める=学会発表に集中したい はずなのに。
このスペイン人たちの‘熱烈歓迎’、昔中国を訪れたときの熱い思いを思い出させました。
人と人 との見えない縁は、磁石のプラスとマイナスが
一旦お互いの境界線を越えると、強力な力で惹かれあい、またつながったふたつは
自然には離れない力強いものがある。
そして、さらに強い力を生む。
磁石同士が カチッ カチッ とくっつく音がする。
僕はそれに向かって働き、旅をしている気がします。
北欧で待っていてくれたレネ。
僕のお母さん役、親友イニャーキ。
僕に刺激をくれる大事な友達、スペインのナチュラリスト、グーゲンハイムのホセアン。
がんばれ!と声援を送ってくれる新しいスペインの友達。
「1年に1回は会いたいな!」と言ってくれる、スペインの古い友達。
日本人とは思えない押しの強さで(笑)、僕を助けてくれたジュンコさん。
キケの料理と料理に対する情熱。
マルティンの人望と心配り。
天才努力家フェラン。
‘出会い’そして‘学ぶ’
そんなところに、生涯のかけがえのないものを
僕は感じました。